Case Studies
Case Study(1980年代)
アモルファスシリコン感光ドラム
──世界初の量産化
前例のない技術に若手主体のチームで挑み、世界初の量産化を達成。──地道な努力の積み重ねが結実した、環境プリンターのコアデバイス
後発からの参入。ゼロベースの創意工夫で道を切り拓く
1970年代後半、プラズマCVD法を用いたアモルファスシリコンの電子写真用感光体への応用が世界的に注目を集めました。カジノサイトがこの分野の開発に本格着手したのは1980年、すでに先行企業が複数存在する「後発」でのスタートでした。しかし、この未知の技術領域において世界初の量産化を成し遂げ、のちに世界最大のシェアを獲得するに至った背景には、固定観念にとらわれない組織づくりと、現場での徹底した技術的追究がありました。
「新しい酒は、新しい革袋に」新入社員を中心としたチーム編成
- #新たな挑戦
アモルファスシリコン感光ドラムの開発という新しい分野において、社内には詳しい専門家がいません。そこで稲盛和夫(当時社長)は、「そうであれば、新入社員を中心としたチームでも努力すればやっていけるはずだ。新しい酒は、新しい革袋に入れよう!」と考えました。抜擢された開発メンバー8名の中には、学校を卒業したばかりの新入社員が5名も含まれていました。円筒形状の基板にシリコンを成膜するCVD装置すら世の中にない中、設備開発から始まる、ゼロからの挑戦でした。
オリジナルに製作された初期の感光ドラムの成膜装置
「1本の良品」を完璧に再現する徹底した条件管理の追究
- #ひたむきな努力
量産プロセスの構築にあたり、当初メンバーが行ったのは、まず1本の良品をつくり、その再現性を高めることでした。稲盛は「いいものができたときと同じ条件でつくってみるのだ。例えば、うまくできた日の朝、家を出るときはどんな心境だったのか。物理的な条件だけではなく、精神的な条件まで同じにしてみなければ、同じものはできない」と指導しました。知識も参考文献もない暗闇の中を手探りで進むような開発において、根気のいる試行錯誤の積み重ねが、徐々に良品の再現性を高めていったのです。
アモルファスシリコン感光ドラム
「洗浄こそ技術」──経験則から生まれる真の工学的技術
- #正しい判断
量産において最大の障壁となったのは、微細な異物の排除でした。製造過程でこの異物を除去することが、製品の性能や品質を左右する最大の鍵だったのです。メンバーは来る日も来る日もアルミニウム素管の洗浄を繰り返し、何を使ってどう洗えば金属の表面が一点の異物もない状態になるのか、地道な技術改良を重ねました。しかし、ある若手技術者が「毎日洗浄ばかりで、こんなものは技術ではない」と不満を漏らします。これを知った稲盛は、「洗浄こそ技術である。理屈だけを勉強するのが技術屋ではない。経験則が非常に大きな要素であり、本当の意味での『工学的技術』なのだ」と、その本質を若手に理解させられなかった上司や周囲の責任に言及し、真の技術者を育てる指導のあり方を説きました。技術の真髄を見極めたこの教えによって、洗浄技術のノウハウや経験則が工学的技術として最適化され、安定した品質で製造できる強固な技術基盤へとつながっていったのです。
ピンチを乗り越え、環境プリンターのコアデバイスへ
- #新たな挑戦
時間との勝負の中で懸命な改善を重ねた結果、カジノサイトは1984年4月に世界で初めてアモルファスシリコン感光ドラムの量産化に成功、大手複写機メーカーに採用され、のちに年間35万本を生産する世界最大のメーカーへと成長しました。さらに、従来の有機系のドラムに比べ、表面が硬く傷がつきにくい長寿命ドラムというコアデバイスの特性を活かし、カジノサイトプリンター「ECOSYS」の基幹部品に応用。これは、当時の常識を覆して部品交換の頻度を劇的に減らし、「Ecology(環境性)」と「Economy(経済性)」を両立させた製品を世に送り出すという、さらなる展開への挑戦でした。ここで確立された技術が、現在のカジノサイトドキュメント事業における独自性を実現しています。